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60年続くカレン民族の戦い

ミャンマーのはなし 学びのはなし

ランボー/最後の戦場は、カレン人とビルマ軍との戦いだ。クリスチャンのアメリカ人NGOが、ビルマ軍により民族浄化(とも言われている)にあうカレン人へに行くところから物語は始まる。この映画で描かれるのは、ビルマ軍による虐殺やレイプ、戦争のむごさと虚しさ、善意と正義の無力さである。*1

 

公開された2008年から8年が経った今も、決してその戦いは終結していない。今年9月19日には、DKBA(民主カレン仏教徒軍=Democratic Karen Buddhist Army)と政府軍下のBGF(=Border Guard Forces)との間で衝突が発生し、5,500人以上もの人がIDP(国内避難民=Internally Displaced People)として避難を余儀なくされている。先月19日にもパアンから3時間ほどの場所でも衝突が起きた。

f:id:taaku3:20161127154636j:plainVillagers Fear DKBA and Government’s Militia Fighting Near Kawkareik Will Result in Displacement « Karen News

1948年にビルマは英国から独立した。カレン人はビルマからの分離独立を求め、1949年、KNU(カレン民族同盟Karen National Union)と、カレン民族解放軍(KNLA= Karen National Liberation Army)によりビルマとの紛争が始まる。これから60年もの間、続く紛争は世界で最も長い内戦のひとつとも言われている。

現在、ほとんどの地域を政府軍により実行支配され、KNUが支配する地域はタイとの国境沿いにあるわずかな地域である。それでもなお、パアン地区を除けばカレン州の多くの地域が政府とKNUの二重政府状態にあり、複雑な様相を呈している。

 

さて、カレン州で仕事をするにあたって、これらの背景を知っておくことは不可欠だろう。先週からさまざまな文献を読み漁って、特にカレン民族組織を中心に図式にまとめてみた。*2

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本当に複雑だ。新規設立・分離・合体を繰り返し、有象無象の組織が生まれ、お互いに戦闘・協力体制にある。以下に主要な登場人物をまとめてみる。

KNU(カレン民族同盟Karen National Union)

1947年に4つの組織を編成して設立され、以降、民族組織の中心的な役割を果たしていく。軍事組織として、カレン民族解放軍(KNLA= Karen National Liberation Army)を構成。2012年に政府と停戦協定を結ぶ。

DKBA(民主カレン仏教徒軍=Democratic Karen Buddhist Army)

1994年、KNUやKNLAの上層部の腐敗が相次いだり、キリスト教カレン人が上層部を占めていることに対して反発し、仏教徒カレン人が独立し設立。KNUの中心地であったManerplawを占領し、数年後には最大勢力となる。設立直後からビルマ軍と連携を取る。

BGF(=Border Guard Forces)

民族武装組織との停戦協定が進むなか、完全な武装解除が難しいと考え、新たにそれらの組織の受け皿として、ビルマ軍下に設置した。これまでにDKBAやKPF(=Karen Peace Force)などがBGFとして編成されている。

DKBA-5(Democratic Karen Benevolent Army)

DKBAがBGFに組み込まれることに反発し、DKBAの第5旅団が分裂し設立。KNUと緩やかな連携体制にある。2011年に停戦協定に署名したものの、実質無効化している。

 

主にこれらの組織が中心的な存在になっている。ただし、KNLAやDKBAとひとことに言っても、複数の旅団があり、DKBA-5のように彼らはほぼ独立的に動いているようだ。完全なトップダウン構造でないために、停戦協定が結ばれたとしても、組織下部で散発的に衝突が発生するのだろう。

また、長年の紛争で蓄積された民族間の確執は組織が変わったからといって、簡単に洗い流されるものでは決してない。目の前で自分の家が焼かれ、子どもがレイプされ、殺されたとしたら。それがある民族と民族の間で行われたら。相手の民族を恨み報復したら。その傷を癒やし、憎しみの連鎖を断ち切るにはどうすれば良いのだろう。

例えば、Free Burma Rangersは13民族からレンジャーを育て、ファーストエイドや保険医療の提供を最前線で行っている。ひとりは言う。「私たちは赦すことを教わった。正直に言えば、赦すことはとても難しい。しかし、敵であっても赦し、相手へ愛を向けることを学ぶ機会を与えられた。もし赦しがないのであれば、憎悪の連鎖は続くだろう。」

 

歴史を学ぶことは、同じ轍を踏まないためだけでなく、どう自分が振る舞うべきかヒントを与えてくれる。当事者にはなれない。しかしながら、言葉ひとつにとっても、目の前にある現状にとっても、理解するには不可欠なように思うのだ。

さて、次はカレン人に話を聞いてみよう。

*1:ランボーNGOがいかにも正義であるかのように捉えられるのは引っかかるが、ランボーNGOへの”介入”を躊躇う姿は、同時にその介入が更なる紛争に結びつくストーリーは、欧米諸国の介入を必ずしも是非としていないシルヴェスター・スタローンの思いが読み取れる。

*2:あまりに複雑で、理解が不足していたり、間違いがさくさんあるはず。あくまでも参考までに。