7days

言葉は物事を現実にする

日本は大晦日というのに、30度を超える日中の暑さがそう感じさせない。しかもミャンマーの新年は4月であるから、年末年始休みもなく、余計に毎月と変わらない感覚になる。

しかし、2016年を振り返ってみれば、本当に多くの変化を越えた年だった。大学卒業後、3年間勤めてきたNPOを今年4月に退職し、国際協力NGOへ転職した。そもそも昨年の12月31日には退職後の仕事さえ決まってなかったことを考えると、2016年はずいぶん冒険的な始まりで迎えた。

転職後すぐトルコへ

福岡から東京で働き始め、ようやく1ヶ月の研修期間を終えたころ、急遽トルコへ出張に行くことになった。シリア難民問題の主要な登場国のひとつでもあり、転職の際に希望地のひとつとしていたとしても、クルド人問題を抱え、テロが頻発する地域へ行くのは少なからず勇気が必要だった。

実際に行ってみれば、そこには平和な日常があった。毎日5回、モスクからアザーンが流れ、人々はお祈りに行く。世界三大料理とも言われる豊かな食文化があり、美しい歴史的建造物が残る。同時にシリア難民を包摂しようとする姿が見られた。

一方で、3ヶ月という短い期間ででさえ、クルド人や反政府政治犯への弾圧、エルドアンの強権政治、シリア難民との文化的摩擦が見えてきた。帰国前にクーデター未遂が発生したことにはずいぶん驚いた。

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ミャンマーへ赴任

今年、5回も引っ越しをした。現在も1ヶ月の1週間はホテル滞在。そんな生活をしていると、自分の家がどこか分からなくなってしまう。

3ヶ月の出張を終え、日本に1ヶ月滞在したのち、9月ミャンマーへ赴任した。ミャンマーもまた、2012年に軍事政権が終わったものの、いまだに軍部が強い力を持ち、長年の内戦で制度も法律もすべてぐちゃぐちゃの状態だ。

義務教育がなく、政府、民族組織、寺院などがさまざまな形態の学校を運営する。高校卒業者はわずか30%、児童労働は当たり前に行われている。ロヒンギャへの弾圧も激しく、ビルマ政府と少数民族との和解は一進一退の状態だ。ヤンゴンでは乱開発が進み、環境汚染は深刻である。

一方で、トルコ同様、ここにも平和で豊かな日常がある。

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2016年で学んだこと

こうして、転々とした生活を送るなかで学んだことがいくつかある。

ひとつは、現在を知るには過去を知らなければならないこと。例えば、カレン州の地域はホワイトエリア、ブラウンエリア、ブラックエリアの3つに、ビルマ政府とカレン民族組織がそれぞれ支配する地域が分かれている。ブラウンエリアは二重政府状態だ。なぜこのような状態になっているか、ビルマ政府とカレン民族との戦いの歴史を知らねば理解は難しい。

もうひとつは、国や文化を知る近道はローカルの人と仲良くなること。言わずもがな、生きた文化や歴史は生活のなかにある。

そして、人が生きるために必要なものは案外少ない。引っ越しを繰り返すなかで、毎回不用品を処分していった結果、必需品はわずかスーツケース2つに収まった。所持品が少ないと身軽になれる。身軽になると移動が楽になる。移動が楽になると特定の場所にしばられることなく、自由になれる。

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言葉にすること

アジアで国際協力の仕事をしたいと初めて思ったのは2009年のことだ。それから7年、紆余曲折ありながらも、ようやく辿り着くことができた。

そして思うのは「言葉は物事を現実にする」ということだ。

関心のあることを職にする。決して簡単でないことかもしれない。ただ、こんな仕事をしたい、こんなことに関心があるということを言葉にすることは、きっとその実現を助けてくれる。

いまの職に就くまでもいくつか大きな選択をしてきた。いや、選択といいつつ、そのときの流れに任せていた。その流れこそ、言葉が生み出したものだ。このような機会もあるのではないかと転職を勧めてくれる、魅力的な転職先を紹介してくれる。大きな選択こそ、自分だけで選ぶことは難しい。

言葉にしてこそ、選択はより目指すところに近づき、物事は現実になる。叶うかどうか前に、自信があるかどうかに関わらず、言葉にすることできっと未来は目指すところに近づくはずだ。そう改めて感じる2016年だった。

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大晦日の今日も日常が流れる。いつもと同じ賑やかな市場がミャンマーで一番好きな景色だ。